多彩な名義でさまざまなスタイルの音楽をリリースするマルチな2人組。 Global Communication 名義はアンビエント専用かと思いきや、この1曲は思いっきしジャズ・ファンク調のブレイクビーツ。エレピやサックスといったジャジーなエレメントに彩どられたビンビン来るブ厚いベースラインのファンクネス、それは紛れも無い「グルーヴ」!そして後半の 「You got to move to the groove...」 のボーカルがたまりません。クオリティ高いです。また、「Modwheel Mix」は流れるようなキーボードリフを使って Cosmos 風のコズミックなディープ・テックハウス仕立て。 DEGOの2000BLACK Remixはリミックス痕が目立つし、しゃかしゃかしたブレイクビーツがあまり好かん。
OUTSIDEはもともと出所がアシッドジャズなだけに、いわゆるフューチャージャズ系の音のほかのアーティストとは若干スタンスが異なる気がします。でも、Matt Kooper自身がれっきとしたライブミュージシャンなだけに生音のセンスは群を抜いており、宇宙への憧憬の念をテクノロジカルな手法を取り入れて具現化しようとするところなんかは、やはりフューチャージャズとして括られるべきところ。このアルバムでは13分間にわたる 「Sketchbook of a Voyage」という曲の中で、まさに宇宙を旅するようなスケールの大きいサントラ的世界を創り上げている。ファンキーな序章から、成層圏を離れてリスナーを徐々にイマジネーションの世界へと駆り立てていく。途中Bylon Wallenによるサックスが入るあたりから不穏な雰囲気へと転換してゆき、OUTSIDE号はスターダストとの衝突を繰り返す小惑星エリアへと入ってゆく。そしてついに、水面をそっと撫でるかのような瑞々しいタッチのピアノソロが美しく輝くオリオン座の星雲を演出し、まばゆい光を放ちつつリスナーを祝福してくれるのである。この曲以外にも、輝く宝石のごとく美しいローズのメロディーラインと駆け抜けるブレイクビーツがよくマッチした 「Finding ALH84001」 もマストな1曲です。
Kenny Dope + Louie Vega による KENLOU 名義の非ハウス作品。柔らかなパッドとブレイクビーツで構成されたシンプルなバックトラックの上をキーボードのメロディがあたかも空を舞うかのように自由に飛び回る、17分超の空中遊泳。アナログに針を落として聞こえてくる1曲には iTunes Music Store でダウンロードした1曲とは比べ物にならないほど愛着が沸く。音楽を iPod に入れて持ち運ぶというお手軽さは、いつしか1曲1曲に対して真剣に向かい合う姿勢を忘れさせていたように思う。
宇宙、地球、そして人間。荘厳で重厚な弦楽の美しさを大胆に取り入れ、テクノロジーとヒューマニズム、つまり人間的な暖かみのある息遣いとを共存させた歴史的名盤「Two Pages」。中でも 「Golden Age of Life」が特に美しく、崇高なる世界を創り上げています。そして 「Planetaria」での、プログラミングによって制御されたブレイクビーツのリズムセクションとコズミックな世界観との融合。Ursula Ruckerの詩が4heroの世界観と一致した 「Loveless」。そして 「Universal Love」での、遥か彼方宇宙への憧憬が生み出した感動的なオーケストレーション。それにしても全体の構成力といい空間処理技術といい、4heroの音楽的ポテンシャルの高さはほんとうに計り知れない。ちなみに、Page 2は...え?そんなのあったんだ。
Compostの古株アーティストAFMBの、98年にリリースされたRemix集。なかなか良い人選です。特に Pulsinger & Tunakan による高速変態ドラムンベース仕立てのRemixはかなりインパクトがあり、途中ジャズブレイクも混ぜる展開が面白く、ヒネリを効かせたサンプリングの使い方もうまい。 Hacienda によるRemixは暖かいメロディーがループし、ダビーで風味あるダウンビート。 Peshay & Flytronix によるRemixは疾走感があり、ジャジーなドラムンベースを代表する好作品です。スムースにRollin'する Karma、エレクトロ調の Beanfield、そして Rollercone によるRemixも良い。
「I am the Black Gold of the Sun」の4hero Remixは、オリジナルのハウスをブレイクビーツへと一新し、ストリングスなどの導入によってドラマティックに仕立て上げた傑作リミックスで、 「Two Pages」の音楽性にも通じています。一方 「It's Alright、I Feel It!」のRONI SIZE Remixでは、荒らぶるジャングリスト魂を、一切の無駄を削ぎ落としたミニマルで肉体的なサウンドによって表現しています。また、南国の爽やかな空気を感じ取れるような傑作ブレイクビーツ 「The Nervous Track」や 「You Can Do It」のリミックスも良いし、おまけにボーナストラックとして収録されている 「Pienso En Ti」も甘ーいラテンなグルーブが心地よい1曲。
前作 「Discoveries」 の宇宙旅行をするようなSF的感覚から一転、内省ムードの本作。しかしその中の1曲 「Transmigration」 は天空の地に天使が舞い降りたような、美しくかつ躍動感あふれる素晴らしい1曲!これまでもOUTSIDEの基軸となっていたMatt Kooperのピアノソロを全面にフィーチャーし、リズミカルなライブのドラムが曲を引き締めています。感動的なメロディーが光の如く降りそそぎ、湧き出る大地のエネルギーの如くホーンの音色が響き渡る、終盤の展開が圧倒的です。
インド音楽および沖縄音楽と先鋭的なテクノロジーとが融合した、真にクロスカルチャーなアルバム 「O.K.」。坂本龍一も参加した「Butterfly」 ではフルートやヴィーナ(弦楽器)の美しいメロディーと刻みの細かいタブラ(打楽器)・プログラミングされたブレイクビーツによるリズムを、清廉なるアンビエンスで包み込んでいる。沖縄三味線・民謡とドラムンベースのビートを掛け合わせた曲なんて本気か遊びかわからないけど、違和感無くマッチしてしまうあたりにドラムンベースの器の広さを感じます。
Guidanceの黄金期を彩だった12inch作品を多数収録したコンピレショーン。深海を突き進むかのような黒くてダビーな1曲目は中毒性高いです。が、なんといっても ALTON MILLER / Progressions が最高。ダビーに浮遊する空間をドンシードンシーと淡々とビートが進み、パーカッションが細かいリズムを気持ち良く刻んでゆくディープな傑作。さらに Kevin Yost もジャジーなウワモノのセンスの良さとグルーヴィーなハウスがかっこいい。というかこの人の曲はだいたい外れ無いけど、逆にいうと王道って感じ。それ以上に Toka Project / Free はメロウな女性ボーカル+ギター使いが素晴らしいスローテンポのハウス。
時代の節目でいつも重要なコンピレーションを編纂している雑誌「remix」からの、その名もずばり「Deep & Spiritual」なるコンピ。アンチ消費文化的な視点に立ち、何年たっても名曲と呼べるようなクラブジャズを、ということで発売されました。収録曲の中ではなんといっても INNERZONE ORCHESTRA / Bug in the Bass Bin (Jazz Version) がすごい!技術的な面はよくわからないので、どこまでがライブ演奏なのか不明ですが、超ハイテンションな怒涛のドラムプレイが凄すぎです。でもそれだけでなく、 Carl Craigのスペイシーなシンセ等の味付けによってテクノとジャズの邂逅を実現している、黒いマシンソウルミュージックの歴史に刻まれるべき作品でしょう。この曲以外にもPESHAYのエポックメイキングなジャズドラムンベースや、フランスの雄 Frederic Gallianoなどなど、実に手ごたえのあるボリュームとなっています。
「Escape That」のシングル盤はCD、アナログを含めジャケも2種類あって色々なバージョンが出ていますが、これはCDシングルのもの。I.G.Cultureの Offspring of Scientist 名義でのリミックスが収録されていますが、「Two Pages Reinterpretations」での New Sector Movements 名義のリミックスとは別物。Ron Trent もそうだけど2つもリミックスするなんて気合入ってますね。しかもこの Offspring of Scientist あるいは Son of Scientist 名義では生音重視の NSM とは異なり、ボーカル「going back...」ネタ使いの実験的なリズムのブレイクビーツでこれまたかなりかっこいいです。
「Two Pages Remixed」の輸入盤。とはいえ収録曲は日本盤のものと半分くらい異なっているので、「Two Pages Remixed」と両方揃えて持っていて損はないでしょう。 「Two Pages Remixed」の方には収録されていないリミックスは、MUSTANG, AZYMUTH, NEW SECTOR MOVEMENTS, RESTLESS SOULなどですが、なんといってもN.S.M.のリミックスという枠を大きく超えた解体再構築が衝撃的。ボーカルまで一新する気合の入れようも素晴らしいですが、単純に生音を導入するのではなく、あえてゴツゴツしたエレクトリックな感じを押し出しており、様々な音楽性を吸収してもはや混沌と化したへヴィなジャズファンク・グルーヴが誕生した。
巷で JAZZANOVA / Caravelle フィーバーが巻き起こっていた頃、タイミングよく届けられた4heroのリミックス集。さすがに4heroのRemixというだけあるのか、どのリミックスも気合入りまくり。中でも特に 「We Who Are Not As Others」のJAZZANOVAのリミックスが鮮烈で、僕はこれを聴いてしばらくの間 JAZZANOVA のシングルやリミックスを血眼になって探しました。アフロ・ラテン系パーカッション導入のセンスが凄まじく良く、スムースなブレイクビーツから一気にたたみかけるラテンビートが熱い!紆余曲折する展開に、最後までアクセル全開!そして、「Escape That」 のRON TRENT Remixもまた名曲です。ハウスビートを軸に、全編にわたってピアノとフルートのメロディーが爽やかに広がる。原曲より良い?これ以外にも重要なリミックス満載なので、ただのリミックス集を越えて時代の鍵とも言うべき作品です。
UNDERGROUND RESISTANCEに代表されるデトロイトテクノに多大な影響を受けているIAN O'BRIENの2nd。 「Amorous Perspective」 の壮大な始まりを感じさせるシンセサイザーのハーモニーから、ファンクのうねりと背後を漂う柔らかな雰囲気が美しい 「Where Does The Past End And The Present Begin?」、まさに深海(もしくは漆黒の闇)の中に一筋の光が差すようなビジョンを作り出す 「Midnight Sunshine」 、4/5の変拍子によるブレイクビーツが極めて流動的に作用し、浮遊感あふれるキーボードの音色が美しく溶け込んだ 「Gigantic Days」。全体的にジャズからの影響が色濃いメロディーセンスが素晴らしく、暖かみのあるジャズ的側面とクールに制御されたテクノ的側面が最高のかたちで融合を果たした大傑作!まさに20世紀最後のそして最高のハイテクジャズといって良いでしょう。
1曲目の気持ち悪いゲイみたいな声や、黒いマシンソウル丸出しにした前半に、初めはなんとなくのめり込めないアルバムと思った。しかし後半10から13曲目はジャジーな生音重視で聴きやすい。ソウルフルな歌モノ「People make the world go round」なんかは普通の本格的なカバーかと思いきや、終盤に緩やかなビートが気持ち良く脈打ったりします。また、 「Galaxy」はフルートの音色とともに始まるパーカッシヴなハウス・スタイルのビートがファンキーな聴きやすい1曲。ピアノを大胆に導入した 「At Les」 あたりのコズミックな美しさも良い。しかし 「Bug in the Bass Bin」 は Jazz Version の方が断然かっこいいです。あと、3曲目のラップで、何か食いながらラップしてるように聴こえるのですが、幻聴でしょうか。ボーナストラックは要らん。
Jamie O'dell初期の本作は生音多用でアンビエント性、ジャズ性ともに高し。クラブオリエンテッドな Audiomontage 名義の音に対して本作は Inner Journey 的な趣向のため初めはややインパクト弱かったんですが、聴けば聴くほど味が出て、実はこれこそがフューチャージャズの傑作かと。生の感触強いドラム主体としたズシッと来るリズムに独特の空間、モーダルなジャズ、時にはダークで電子的なムードにと、かなり細部まで手の込んだ作りの曲がノンストップで展開されてゆく構成。また、中盤転調してからの展開がかっこいい「The Blazing Water」では「You do not come and I wait on Matsuo beach in the calm of evening and like the blazing water I too am burning」という印象的なフレーズが登場するのですが、調べたらこれは藤原定家の百人一首なのですね。メッセージ性強いです。
オリジナルの弦楽曲を5人のリミキサーが料理。シンプルなハウスの Ashley Beedle や Fink のドラムンリミックスはつまらないが、ダークな音響で音数少ない Pan Sonic 、コントラバス?の響きを拡張して不安感を与える Andrea Parker 、そして素晴らしいのは J.Swinscoe によるリミックス。 Cinematic Orchestra 名義で一躍有名になった彼ですが、このリミックス作品でも強烈な印象を与える。中盤から重たく深く沈み込むようにダークなフリージャズへと急展開させている。荘厳な弦楽によってさらにスケール感が増しています。
まず、「2000BLACK」を「ニセンブラック」と読んでしまう自分は日本人です(モデルゴヒャクなども同様)。それとジャケがスタイリッシュ。ハードディスクか? さて、これはブレイクビーツの可能性を追究する2000BLACKレーベルのコンピなわけですが、ディープなトラックものから聴きやすい歌物まであります。ユニット名も曲名もそのまんまなMM BLACK 「2000Black」はまさにレーベルテーマ曲にふさわしき素晴らしい曲。SEIJI / Silver Blossomは、エレクトロ風味のブレイクに、緊迫感のあるストリングスをのせた曲。DOMU / Groovesomeも、マッドなブロークンビーツがダンサブル。そして個人的にすごい好きなのは、NU ERA / Terahです。4HERO 「Two Pages」へとつながるコズミックな世界観+ライブ感覚のスムースなブレイクビーツ。あと、PARISS / Black Maryはブレイクビーツというキーワードとはあまり関係のない1曲ですが、極上のソウル。7~10曲目あたりはややきつい。ラストのDA ONE WAY / The Mindも良い。というかI.G Cultureは天才。
ビートに関して言えばまぎれもないハウスですが、2、3、4曲目に見られるような甘く美しいボーカルを中心とした緻密で浮遊感あふれる音造りが素晴らしい。特に歴史に残る名曲 「Cascades of Colour」 は、アンビエントな音が絡み合いながら滝のように流れ、太陽の光に照らされて輝くような感覚を呼び覚ます。満天の夜空に星が輝くなか白砂の浜辺に生い茂る熱帯系植物、というアートワークがこの作品のリゾート的、オアシス的なイメージを忠実に再現しています。ジョークラウゼルを差し置いてBODY & SOUL系ディープハウスの金字塔作品。
アルバムのジャケがバカボンということでも有名なATJAZZの、次回作からの先行シングル。実はこれ海洋生物系のアートワークに惹かれて買ったんですが、内容もかなり良かったです。美しい女性Vo.をフィーチャーした歌物で、初めはスムースなブレイクビーツで始まるのですが、中盤華麗にハウスへと変化する。全体を通してダビーなKey.が浮遊感を醸し出しており、部屋に心地よいヴァイブをもたらしてくれる1曲。また、Little Big BeeによるRemixは典型的なディープハウスですが、その分ツボをおさえた出来。パーカッションと哀愁漂うピアノがいいアクセントとなっています。
原曲はず太いキックによるハウス系ビート。終盤メロディアスな要素が入ってきて盛り上がり、締めは当然お家芸のKey.が奏でる美メロです。ここ至福の瞬間。で、原曲も大好きなんですが、リミックスの方も大注目です。まずはShur-I-Kenなる人によるRemixで、ファットでかっこいい2ステップビートのイントロから途中ハウスっぽく変化し、さらに美しいフェンダーローズが入ってくる。小宇宙感覚と同時に、愛を感じます。また、Tom Middleton(バルコミ)のCosmosによるRemixは、ひたすらフロア対応な力強くてしなやかに反復するテックハウス。パーカッシブであり、トランス的なフレーズがループする。全3曲とも音量をあげ、素晴らしき音圧にぶっとばされよう!
audiomontageは、Jimpster名義のアルバム「Message From the Hub」も有名な、Jamie O'dellのプロジェクト。音の方は、とにかく堅苦しいことなしに体が反応する力強いビートを前面に押し出し、それでいながらスペーシーでメロディアスなKey.などによる浸れる要素もたっぷり、ていう感じ。水面下を漂うディープなアクアファンク 「Abyss」、メリハリのあるビートと明るい光を見出すような音使いの 「Look to the Light」、大空を駆け巡るような伸びやかで爽快感あふれる 「Barracuda」など、清く美しいエレクトリックファンクフュージョン満載。IAN O'BRIEN, AS ONEと並ぶハイテクなジャズの3大巨頭の一人としてこれからも目が離せない存在です。
ノルウェーの2人組による、nuphonicからのデビューEP。ボーカルとギターをはじめとしたライブサウンドとテクノが融合した、まさにチルアウトと形容するにふさわしい雰囲気のロービートです。 「Out of Control」は、キーボードによって作られた奥行きのある空間を、抑制の効いた男性ボーカルとギターが美しいメロディーを奏でる歌モノ。一方、「Pacific Memories」はまさに太平洋のような雄大な雰囲気をもつギター中心のインスト。 「Solara」は、グルーヴ感に富んだミッドテンポのブレイクビーツに、やはりここでもピアノの奏でる美メロが素晴らしい曲。どの曲もひんやりとした美しさをもっており、そこが「チルアウト」と感じさせるゆえんだろう。
ひっそりとリリースされた「An Evening with Hefner」ではかなり斬新なビートフォーマットのニュージャズ(Mixmaster Morris曰く、 「What is this Music」 )をやってくれて、リリース前は期待大だったアルバム。独特の感覚はしっかりあるが、むしろ歌モノの美しさが光った。なんといっても「Dive into you」「Level Green」の2曲のエヴァーグリーンな美しさは永遠でしょう。残念ながらアルバム収録の「An Evening with Hefner」は先のEPでかっこよかった曲とは違っていて、どうやらいくつかバージョン違いがあるらしい。
Peacefrogからの4曲入りEP。 「Yemura」 はアルバム 「Giganic Days」路線の宇宙感覚も持ちながら、ちょっとトライバルで不思議なリズムとギターやフルートなどの生楽器も多用した曲。展開のしかたが面白くて飽きさせない。 「Eden」は静かでアンビエントなジャズ。小宇宙的な空間の広がりを感じさせるRhodesの残響が美しすぎる!70年代ジャズへの敬愛が生みだした楽園世界。これ以外にもハーモニックなシンセのアンビエントあり、テクノっぽいブレイクビーツありと、4曲とも毛色が違うので楽しめる。
アルバム「Programmed」唯一のカバー曲の歌モノ。「人が地球を回している」というタイトルが美しいです。リミックスを収録した12inchは2種類出ていますが、Keny Dixon Jr. (Moodymann) によるリミックスが素晴らしい。なんと新たにベース・キーボード・サックス(Norma Jean Bell)を起用したインストバージョンとなっており、気合の入った本格的なジャズファンクへと再構築。ミッドテンポからややスローな重たいハウスへ変化してゆく展開がかっこいい。やはりこの人の作り出すビートは何かが違う。なお、「J88 Remix」はシンプルなヒップホップビートを乗せただけ。
CompostからのMINUS 8のRemix EP(第2弾)に収録。ざっくばらんな音の断片を築き上げるDR. ROCKITのリミックス、いかにもNuphonicらしいボーカルもののアフロ・ハウスであるTiny Trendiesのリミックス、シンプルな2ステップのZimpala Remix、そして目玉は LES GAMMAS によるリミックスです。シンセの高音が非常に伸びのある空間をつくりだし、ブレイクビーツにパーカッシブなラテン系ハウスのグルーヴが重ったビートが走り抜ける、爽快感あふれる1曲。終盤からはこれまた伸びやかな女性ボーカルにホーンのフレーズが重なり、さらに盛り上がります。
デトロイトの怪人Moodymannの作り出すハウスには単純な機械の反復とはどこか違う何かが潜んでおり、極めてアナログな質感を有する。ビートの間からにじみ出るドス黒くうねった何か、それは黒人の築いた歴史や精神が生み出しているのだろうか。緩めのビートに呪文のような声がループする1.をはじめ、官能的な女性ボーカルが愛やエロスを匂わすスムースなディスコ調の「Your Sweet Lovin'」や「Don't You Want My Love」、黒人達のコール&レスポンス、美しいゴスペルを歌い上げる中ハウスビートが疾走するという宗教的な側面を含んだ「The Thief That Stole My Sad Days」、マーヴィン・ゲイの死を報道するラジオのコラージュから一転アッパーなディスコハウスがミニマルに展開される「Toribute to the Soul We Lost」、そして「The Setup」や「Forevernevermore」で特徴的なように、えもいわれぬ変態性、猥雑性が潜んでいる。
リミックス仕事や別名義でも傑作連発で絶好調という感じのI.G Cultureがメインとなるユニット。4曲中3曲はボーカル入りで、手法的には2000BLACKのコンピに収録された大空へ飛び立つような高揚感とスピード感に満ち溢れた大傑作 DA ONE WAY / The Mindの路線を行くものです。 古くからクラブカルチャーにたずさわってきたI.G.の体にしみついたジャズ・ファンクといった要素が「Para」のように不規則かつ独自のグルーヴ感をもったリズムパターンと融合。 「Survival」での伸びやかな雰囲気もクールかつロマンティックで、ムードのある男女デュエット形式のボーカルやコーラスワークが曲の表情を豊かにし、それらをまとめ上げる緻密なプロダクションも冴えわたる。西ロンの新たな息吹の誕生を感じさせる衝撃的な一作、名付けてアーバンエレクトロニックPファンク。
腕利きのジャズピアニストだけあってその音楽性の豊かさは他の群を抜いているOUTSIDE。 「Sarvesham」はいつになくポップなボーカル曲であまり面白くないのですが、 「Tears」はハープやヴァイオリン、ピアノが奏でる悲しみのメロディーが美しく、中盤からはMatt Cooperの真骨頂と言える瑞々しいタッチのピアノソロも若干ではありますが聴くことができます。タブラを導入したりして2曲とも東洋音楽的要素をとり入れていますが、これが彼らの新しい展開なのかもしれません。やはりOUTSIDEといえばなんといっても 「Transmigration」が一生モノの素晴らしさだけに、彼らには多大な期待を寄せるところではあります。
これは個人的にはIan O'Brienの数あるリミックスの中でも最高傑作に挙げたい1曲。Carla Hendryなるスウィートな女性ボーカルをさらに引き立てるかのようなシンセパッドの上を浮遊する筆舌に尽くし難い美しさ、そして後半のキーボードソロも感動的な、ドラマティックな10分間。デジタルファンクネスを感じさせる、精巧に作りこまれたロールするブレイクビーツもかっこいい。原曲の良さを継承しつつ、リミキサーの個性も光っている類稀なる傑作リミックスでしょう。
Phil Asherのユニット、RESTLESS SOULによるリミックス。ボッサのリズムにピアノの音が絡み合い、「It's all about space and time」のナレーションがコズミックな世界へといざなう滑り出し、中盤からブレイクビーツハウスに変化します。さらにパーカッションがrawなリズムを刻みつつ、とにかく絶品ともいえる美しさのローズピアノがストリングスと相まって、はるか彼方の銀河へと思いを馳せるメロディーを奏でる。そして終盤には名残を惜しむように四つ打ちハウスのリズムで締める。生楽器を導入した打ち込みの中に、デトロイトテクノからの影響も感じられるこの1曲は、近年稀に見る素晴らしいリミックス作品といえるのではないでしょうか。
坂本龍一「Prayer/Salvation」のリミックスでは非常にダークなフリージャズを聴かせた J.Swinscoe らによるユニット。聴き込んでゆくとその重厚なスケールのシネマティック・ジャズに圧倒される。ウッドベースやブレイクビーツを通過した細かいドラミング、悲壮感ある細いストリングス、ところどころ顔を出す映画音楽的要素。特に13分間で展開される大曲「Night of the Iguana」での分厚いホーンセクションは圧巻です。なお、日本版ライナーノートに Innerzone Orchestra に似ている、と書かれているがそれはウソだろう。名前が似ているだけ。
西ロンドンを拠点とするMainSqueezeレーベルのコンピ。I.G Cultureを始め、Kaidi Tatham, Alex Attiasなどおなじみのメンツが参加していますが、なぜか変名ユニットが多い。2 Banks of Fourの変名 Numbersによる1曲目は、異様に刻みの細かい疾走感あふれるブレイクビーツが冴えています。Mustangによる2曲目は、ブロークンビーツの曲では定番の、ボーカルもの。 4heroのDegoとI.Gのユニット、The One Way 「1969 LSD Maddness」、ノイズが飛び交う混沌の中からあらわれるピースフルなメロディーがコーラスへとつながってゆく展開が好きです。 Murky Waters 「The Non Commital Yes」、I.G節炸裂な不規則ブレイクビーツにまたやられました。全体的にボーカル曲が多いため聴きやすくはありますが、変名ユニットならではの実験的な要素を盛り込んで一筋縄でいかないところが良い。
基本的にはPEOPLEレーベルのコンピではあるが、主役であり多くの曲に絡んでいるのがI.G Cultureである。彼は主に2つの名義を使い分けており、まず LIKWID BISKITはブレイクビーツのリズムパターンに凝ったいわゆるブロークンビーツを主体とした名義であり、 「Complete Worries」は昨今の西ロンドンのムーブメントを象徴する1曲と言えよう。ランダムなようでありながらグルーブ感に富んだブレイクビーツに、ファンキーでジャジーな音が乗っかる。この人はいつも声ネタの使い方がうまい。また、NEW SECTOR MOVEMENTS はより生音指向な名義であり、 「Futuristic Dancer」はちょいオールドスクールなディスコ調ファンク。生楽器多用で、本格的な1曲です。
アルバム連発で注目なKing BrittによるRemix。 彼の曲には長年の経験によって培われたベテランならではの熟練した芳醇な味わいがあります。 SYLK130 や SCUBA といった名義を多用していますが、SCUBAでのRemix作品ではスペイシーなディープハウスが多く、個人的にはツボ。本曲は水面下に広がる楽園のような美しい音使いと女性ボーカルがトリップ感覚に溢れ、ブロークン気味のブレイクビーツ~ハウスもかっこいい。ボコーダーVo.もスペイシーさを一層引き立てています。終盤のトランペットソロも素晴らしい。
良く知らんが大御所アーチーシェップの曲をイタリアのEddy & Dusの二人がリミックス。3バージョンあり、特に 「Blue Clave Mix」はクラーヴェが軽快な3-2のラテンリズムを刻み、ウエストロンドン風Funky Broken Jazz Beatが最高にかっこいい。たしかにJAZZANOVAあたりに近いものを感じますが、こちらは楽器全体がセッションしているライブ感覚がより強く、より肩の力を抜いて楽しめる一曲。これをよりエレクトロニックな傾向を強くしたバージョンと、スローでモンドな 「Eddy & Dus Mix」も入っています。掘り出しモノ的傑作。 Eddy & Dus は注目株です。
名作 「Planetary Folklore」 以来となるアルバム。 Ian O'Brien を宇宙とすれば、こちらは空をイメージさせる浮遊感。リスニングに適したゆったりめのスムースなブレイクビーツに伸びやかなシンセが心地良いフュージョンとなっている。渋い男性ボーカルモノの 「I'll Keep Lovin' You」あたりも良いし、まろやかなキーボードソロ「In the Arms of You」も美しい。また「Amalia」は、Jamie O'dell (Jimpster) によるフェンダーローズの官能的なメロディを大胆にフィーチャーし、4heroやBukemの作品にも参加した Andy Hamill によるウッドベースや生のドラムなどによる本格派。全体的に若干の無機質なフレイバを加えた、テクノのフィルターを通したソウルといえる。作りはシンプルで際立って目立つところは無いですが、端正なフェンダーローズの音色が好きなら是非!
ブレイクビーツ~ハウス~2ステップ~ブロークンビーツといったリズムを巧みに昇華し、音に浸れる気持ち良さを追求することで生まれた、都会的なリスニング・クラブジャズ。全体的にライトで浮遊感のある音で包み込まれており、ホーン等によるジャジーなエッセンスが、濃すぎることのないちょうど良い塩梅の味付けをしています。丁寧に練り上げられたブレイクビーツが生み出すスムースかつダンサブルなグルーヴ感がたまらない。 Naked Musicとも交流があることからもわかるように、リスニングにも適した心地良さ。
ノルウェーのJAZZLANDより。いわゆるクラブ系ジャズではないバックボーンを持ちながらもクラブミュージックの手法を積極的に取り入れて 「NEW CONECEPTION OF JAZZ」 を模索する、ピアニスト/キーボード奏者 Bugge Wesseltoftのアルバム。タイトル曲 「Moving「 は、じわじわと盛り上がっていく展開がかっこいい。ダビーな処理を施したKeyやベースに混じってドラムが徐々にリズムを形成してゆき、重たい四つ打ちキックがドロップされる。焦らしのテクが効果的な疾走感のある1曲です。
都会の喧騒から逃れるための音楽。限られた音楽ムーブメントに焦点を当てているわけでもなく、かなり自由なコンセプトに基づいたコンピです。ダビーで優雅なピアノにブレイクビーツがかぶさる Broadway Project や Unforscene など、ちょっと脇道に逸れないと通り過ぎてしまいそうなマニアックな人選が良い。全体的に優雅なジャズの雰囲気を感じさせるアンビエントといった趣で、後半ジャズ色が濃くなってくる。個人的に嬉しいのは IAN O'BRIEN / Midday Sunshine の収録。この曲は 「Midnight Sunshine」のセルフリミックスともいえる過去の12inchに収録された曲ですが、原曲が持っているはるか深く海淵へと吸い込まれる壮大なスケール感を拡張し、フェンダーローズのメロディーがコズミックな響きを聴かせるという、彼の作品でも3本の指に入る好きな1曲。さらにこの後に続く、AS ONE / Dhyana もまた、包容力のあるアンビエントとシャッフルするビートが良い。曲間のミックスはさすがに上手いし、様々な視点からアンビエントを感じ取れるナイスコンピレーションです。
Sonar Circle名義ではENFORCERSの一員として先鋭的なブレイクビーツを模索していたDOMUのデビューアルバム。DOMU名義では2000Blackからのシングルリリースがあり、またコンピ「The Good Good」での 「Groovesome」 という曲がカッコよく、ひそかに注目していました。本作の中で一際目を惹くのは、やはり 「Sail Away With Me」 でしょう。 「Sail Away With Me」 というロマンティックな曲名にグッとくるし、力強く変則的なビートに Valerie Etienne のしっとり歌い上げるボーカルが可憐なる華を添える1曲。アルバム全体的には少々荒削りともいえる硬質なビートを基調にしていますが、 「Marajade」 に見られるような緻密な構成によって疾走感のあるブレイクビーツも注目。Ian O'Brienらのゲスト陣もあります。
前2作において、素晴らしき宇宙遊泳ハイテクジャズを披露したIan O'Brienの3rd アルバム。前作では全体的に統一感がありましたが、今回は予告編EP 「EDEN」 の流れでよりバリエーションが豊かになっている感じです。彼の宇宙志向が創り出した吸い込まれるようなディープコズミックアンビエント 「Lucia Pt.1」 で幕を開け、あのDOMUがドラムプログラミングで参加した、鮮烈なるハイパーブロークンビーツの神髄 「Veksel」 、さらに、トライバルなパーカッションがミニマルに連打され、呪術的とさえいえる土着なグルーヴ感が沸き立つ 「Spiritual」 へと展開していく。 「Theme from Apollo」 のように静謐な空間に美しいRhodesがメロディーを奏でるアンビエント性高いジャズも注目でしょう。アルバム全体としての流れもあり、聴きごたえある1枚です。
I.G CultureやBugz in the Attic絡みの作品では必ずといっていいほど見かけるキーボードプレイヤー、Kaidi Tathamのソロ作。Izzi Dunnという名の女性ボーカリストをフィーチャーしており、また、アフロ~ラテン系の土着的なパーカッションとプログラミングビートが融合してポリリズミックなものとなっています。I.G.Cultureの Son of Scientist 名義によるリミックスも収録されており、こちらはビートコンシャスで無機質、いつになくテクノ色の強いリミックスとなっています。圧巻は曲の終盤の展開で、フロア向けなベースの強いブロークンビーツが一気にヒートアップ。
ウエストロンドンの真打のアルバムがついに登場!昨年出た4曲入りEP 「No Tricks EP」 の内容がとても素晴らしかったのでアルバムを心待ちにしていましたが、多大なる期待をゆうに越えるほどの確固たる大作。EPの曲は収録されずに全曲新録となっており、Julie Dexter, Eska, Bembe Segue らのボーカルを中心として生音をふんだんにとりいれ、I.Gのお家芸である緻密にプログラミングされた複雑なブレイクビーツが斬新でクールなリズムを付加している。ボーカルはどれもハーモニーを重視した美しいものですが、中でも 「The Sun」 はその極みともいえるメロウな1曲。シングルでの Dwele によるリミックスではさらにメロウ度増したロービートとなっています。個人的に好きなのは、「No Tricks EP」 にも登場した Eric Appapoulay をフィーチャーした 「Spontaneous」 で、彼の甘い歌声とギターのカッティングが溶け合って甘美で妖しい空間を創り出しています。 「Two Sides」 の疾走感あふれるブロークンビーツや 「Never Been Closer」 に感じ取れるヘビーファンク的要素もたまりません。唯一のインスト曲である 「Mass Car Raid」 は、あらゆる要素を吸収した高速ブロークンビーツ・フュージョン。
僅かなリリースのみで謎に包まれた感もありながら、発売前にしてすでに話題を呼んでいたシュリカンのアルバム。プロデューサーとして参加しているTom Middletonがつくりだす男性的な力強さと、SHUR-I-KAN本人による女性的な優雅さや叙情性とが融合した素晴らしい一作です。特に「Cookie」 では、2ステップ的なビートから中盤にとても力強いハウスビートへと昇華し、ここでのピアノのメロディーがエレガントかつコズミックな雰囲気をつくりあげています。 「DUBFUNK」 の夢想世界で鳴り響くようなジャズも素晴らしく、ダビーな効果で部屋の空気が包み込むかのよう。 「Somewhere」では後半の美しすぎる展開に注目。
目玉はボーカル曲 「Continue the Journey」 の Celestial Boogie Mix です。その名の通りブギーなテイストをたくさん散りばめ、スペイシーなKey.やギターのカッティング、ベース、タイトな生音ドラムとパーカッシブな打ち込みが一体となり、ファンキーなリズムを作っている。明るい女性ボーカルも良いし、実にポジティブでダンサブル。クラブ系ジャズの新展開を思わせる重要な1曲かも。インスト曲 「Zone」 はハービーの 「Rockit」のようなタメの効いたヒップホップ系ビートが冴える。全編にわたり、さまざまなパートの音がリズミカルに響く、スペイシーなファンク!
Jimpster名義での「Deep Down EP」や「Freezone 7」でのShur-i-kanとの共作など、コンスタントに活動していて相変わらず目が離せないJamieO'dell絡みの作品。本作は「Seeing is Believing」あたりから活動を共にしているNick Cohenら3人による新しいユニット、 Tea Dancers のデビューEPです。 「Waking Up The World」 は、複雑なリズムによる5/4拍子ブレイクビーツテックフュージョンという感じで、彼お得意の伸びやかなキーボードのメロディーが広がり、クールなロマンティシズムに貫かれた秀作です。 audiomontage の延長線上にある音といえる。
圧倒的な存在感をもつ「詩人」Ursula Rucker。その詩の世界は凄まじくスピリチュアル(霊的)であり、リスナーの意識に深く訴えかけてくるような声が、高尚なる美ともいえます。大学でジャーナリズムを専攻していたというだけあって、その詩の世界は現代社会に対する警鐘ともいえる強いメッセージ性を持ったものが多く、音楽として楽しみつつもその詩の世界にも触れることによって、よりこのアルバムの価値が増すでしょう。中でも 「Brown Boy」 は、スロー&ファットなビートと透明感溢れる甘く切ない歌声が美しくももの悲しく、個人的には最も好き。このアルバムで Ursula Rucker に興味をもった方は、是非 King Britt / Circe や 4hero / Loveless もチェックしてください。
最近はハウス以外のコンピも多数リリースしていたGuidanceですが、久々にディープハウス黄金期の名シリーズ「Hi-Fidelity House」の3作目が登場しました。とはいえハウス以外のビートスタイルの曲も多く、なかでも Ursula Rucker をフィーチャーした King Britt / Circe の JAZZANOVA Remix は大変素晴らしい。ロービートにのせた妖艶かつスピリチュアルなポエトリーリーディングにゾクゾクするほどやられます。また、6曲目のファンキー&グルーヴィーなブレイクビーツが今までにはないタイプであり注目すべきですが、Solid Stateというのはクレジットから察するにドラムンのソリステさんとは別人のようです。その他のディープハウス系トラックはどれも普通な感じですが、そこそこ愛聴できる。
オリジナルバージョンは夕暮れ時のようなメランコリックなラウンジポップソングですが、これを見事にグルーヴィーな曲へと作り変えています。あくまでもオリジナルの美しい歌のメロディーラインを損なうことなく、流れるようなブレイクビーツ+ピアノ、ストリングス、キーボードなどを導入したお洒落でジャジーな音使いで、まさに Naked Music 仕立てにしています。まったりポップなZero 7のカラーと、お洒落でグルーブ感の強いAQUANOTEのカラーとが結実し、相乗効果によって生み出されたなかなかの傑作!
本名Kaidi Tatham名義で先行リリースされた2つのシングルが、良いには良いけどちょっとベタな感じだった上に、ジャケが濃いというくだらない理由で今まで聴いていなかったこのアルバム。しかしフタを空けてみれば、そんな予感を大きく覆す実にクールな音なのでした。というのも、ミニマルに展開されるグルーヴに、クールなテクノ的感覚がちらほらしているのです。澄んだストリングスとCarleen Anderson の美しい歌声が美しい 「Ride Away Getaway」 でのブロークンに刻み込まれる変則リズム、また、本作一のミニマルトラックである 「Thy Lord」 や、フリースタイルなボーカルが絡む 「Feed the Cat」 といった曲での、複雑過ぎない程度に緻密に計算され尽くしたブレイクビーツのリズムが実に滑らかでかっこいい。そしてなんといっても Vanessa Freeman をフィーチャーした 「Hands」 での、厚みのあるベースラインと走り抜けるドラミングに伸びやかなボーカルが加わって、滑空するような素晴らしい解放感に満ちたグルーヴが本アルバム最大の聴きどころでしょう。 テクノのクールネスが貫かれたブラックミュージックのダイナミズム、それが見事に結実した1枚!すでに幾多のユニットにおいて欠かせない役割を担ってきた経験豊富な天才Kaidi Tatham だからこそ成し得たのでしょう。
数々のコンピで有名になったNaked Musicからは初となるアーティストアルバム。ジャケットが示唆するイメージがピタリとはまるような、洗練された都会的かつお洒落、ディープ、そしてセクシーな音です。最新シングル 「Let's Do It Together」 から 「Sweeter Love」、「Pure」、「Music and Wine」 といったヒット曲を散りばめて展開される本作は、部屋のBGMとして極上に美しいグルーヴを与えてくれる。どの曲も四つ打ちのハウスの隙間を縫うパーカッションがいい味を出していますが、中でも 「Love Yourself」 はハスキーボイスのセクシーな女性ボーカルが心地良いラウンジーなディープハウス。
CALM編集のコンピシリーズ、Vol.1がジャズを感じさせるアンビエントを集めた好作だったのだが、このVol.3は音の系統はさほど限定せずに最近の日本人アーティストの活躍を紹介するような形のオムニバスとなっている。そのためリスナーの好みによって曲毎に当たり外れがあるかもしれないが、個人的には超マグナム級のトラックが収録されているので重宝しています。というのはSugar Plant / E2-E4~Just Be There、あのマニュエル・ゲッチングのE2-E4をリメイクした本曲は、原曲のトランシーなフレーズをところどころ聴かせつつも甘いギターと軽やかなブレイクビーツによって非常にスウィートなリメイクとなっている。ストリングスが伸びやかな中盤のブレイクから、なんとまあ美しすぎる女性ボーカルが入ってハウシーなビートへ転換する流れがたまりません。さらに Bayaka / Rakuen #1、密林を抜けた先に出現する楽園のような雄大なムード、生半可じゃない本当の「スピリチュアル」さに心が洗われます。実は以前「nowhere rain」というコンピに収録されていたのを耳にしたとき以来、とても気になっていたこの曲が本来の目当てだったんです。また、サックス、ピアノ、パーカッションを主体としたバンド形態の演奏としなやかなグルーヴが心地よい Organ Language の CALM Remix がお気に入りです。
のっけから悲壮感漂う歌で始まる本作は、暗くそして美しい、孤独で内省的な雰囲気に包まれており、ジャケットの絵のごとくベッドルームでひっそりと聴くのに適した音です。暗さの中にも一筋の光を見出すような美しい女性ボーカル 「Ready」 や、冷ややかな透明感に富んだ男性ボーカルがかっこいい重たい四つ打ちハウスの 「Your Life」 が目を引きますが、 ズーンと沈み込むような低音と精巧なブレイクビーツが暗黒の深層空間を創り出し、神秘的な女声や楽器の音が浮かんでは消えてゆく 「Fox Soup」、そして瞑想的なアンビエンスと美しい詩が自我の精神世界へ訴えかける 「Forget the Past」 あたりも実に味わい深い。終盤には、 「I'm Falling」 でどこまでも落ちてゆく…。全曲余すところなく聴きこめる傑作でしょう!
そういえばアルバムはまだ(これを書いた時点で)な、Jazzanovaの久のリリース。Jazzanovaといえばパーカッションなどによるラテン系のリズムを導入した音のイメージが強いですが、今回は意外にもソウルフルなボーカル曲。重たいスネアが細かく打ち込まれたリズムを刻み、徐々に入ってくる美しいピアノ、そして Vikter Dulplaixによる繊細な歌声…。サビのコーラスワークはとても暖か味があって良いです。甘ったる過ぎるきらいもありますが。 Jazzanova特有のリズムへの新しい試みがなされており、アルバムへの期待高まる1曲。
別名義を除けば97年の「Moving Through Here」以来となる久々のアルバム。その間、「The Sky EP No.2」や「EARTH4」での2曲、先行シングル 「Caboclo」 といったリリースを経て、アンビエントからディープハウス~ブラジリアンと、かなり作風を変えてきています。本アルバムではexceptionalからの既出曲が半分、新曲が半分という感じで構成されていますが、新曲となる 「Bossalude」 ではかなりテンションの高いブラジリアン・サンバハウスをやったり、 「Caboclo Interlude (the pacific Mix)」 ではファンキーなテックハウスをやったりと、ハウスに寄った傾向が強く感じられます。とはいうものの、John Beltran特有のどことなくローファイな質感、涼しげな哀愁は感じ取ることができるでしょう。「The Sky EP No.2」からの 「Petra」( 「Expecting Rain」)や、なぜか新しい曲となっている 「Soul Sketching」 のアンビエントも素晴らしいし、 「Caboclo」 も良いので、アナログを聴いてない人にはぜひオススメでしょう。
秀作アンビエント「The Sky EP No.2」もリリースしている exceptionalレーベルより、 John Beltran の12inchシングル。本作では最近の彼のウリであるブラジル~ラテン系の音要素もとりいれつつ、今までになくビートを意識したハウスをやっています。なんといっても 「Beltran's Beach Mix」 が凄まじく、丸みを帯びたキックが漆黒のグルーヴを生み出し、背後をスモーキーなサックスが幽玄に漂う、かなりディーーープなハウスです。終盤はサンバブレイクへと展開。 「Original Mix」 の方はややアンビエント寄りな音で、正統派のディープハウス。一方、裏面の 「Get F**ked Mix」 はテックハウス系のアッパーなビートがドンシードンシーと反復する。
KABUKIは、MAKAIやMEGASHIRAといった名義でも多くのブレイクビーツ系作品をリリースをしているドイツ人。やはり親日派なようで、北野映画も好きらしいです。MAKAIって名前はかっこいいですね。それはさておき、このシングルは ATJAZZによるRemixが素晴らしい。フリューゲルホルンやフルート、キーボードなどの生楽器を導入しており、ファットなビートがズシリと重たい2STEP系のリズムが実にかっこいいフュージョン。Original Mixの方は、ファットなビートはそのままに、ドラムンベースというかブロークンビーツっぽい感じで、音使いがダーク。こちらもなかなか。
2002年4月にリリースされた2ndアルバム 「Everyday」 以来となる新曲。Niaraという新人女性シンガーをフィーチャーした 「Horizon」 は、アルバム 「Everyday」 の続編といえるソウルフルな歌モノ。スケールが大きくて重厚な音はいつもの通りで、今回は一層親しみやすいメロディーが聴きやすく、幅広いリスナーにアピールしそうな1作。ジャケットも良し。個人的には Zero 7 / Destiny と並んで勇気を与えてくれそうな1曲かも。
Jamie Odellのガールフレンドのママの寄付からスタートし、AudiomontageやShur-i-Kanなどのリリースを経て今やもっとも信頼のおけるレーベルのひとつとして確立したレーベルFREERANGE。レーベル誕生5周年を記念し、12inch作品に未発表の新曲を加えた、ありがたいコンピレーション。浮遊感のあるジャジーなウワモノに、ソリッドなブレイクビーツ~変則ハウス~2ステップというレーベルカラーを反映した全11曲はどれも聴きごたえある。1曲目はKUDOSよりリリースされた Jimpster / Deepdown で、流れるようなシンセの上を、煌くKey.の音色が美しく浮遊する変則ディープハウス。 Shur-i-Kan / Advance からのRemix作品も2曲収録されており、ハネる2ステップでファンキーに作り変えた Landslide のRemix、ズシッと来るハウスビートがかっこいい Swell SessionのRemixはどちらも非常に良い。しかし Audiomontage / Flyin' High (Shuriken Remix) が収録されなかったのは残念。
Naked Musicの看板シリーズであるNude Dimensionに対して、Carte Blancheは様々なレーベルからの未発表と思われる新曲を、自由度の高いセレクションでMixしています。オープニングは、GoodLooking時代もさんざん魅了されてきた Blu Mar Ten の緻密なプロダクションに Blame が味付けをしているというだけあって、在りし日のGLRの最良の部分とも言える、フェンダーローズの音色に包含された宇宙観を拡張したコズミックなサウンドは未だなお健在であり、嬉しい限り。実は Blu Mar Ten は考古学を学んでいた背景があってか、若干のオリエンタリズムを感じさせる旋律も導入されており、やはり他に類似しない個性を感じます。さらに1.の雰囲気を上手く引き継いでスムースな流れで続く2.は、 nuphonic からの Pacific Memories EP がかなり興味深い内容だった Fenomenon による1曲。しばらく見ないうちに著しい進化を遂げていたサウンドは、美しい要素を散りばめた素晴らしい1曲!終盤はアップテンポに展開していきますが、14.の Weekender はファットなキックとシルキーボイスが恍惚へと導く!
3年前DEGO(4hero)のDJで聴いて以来、今日の今日までリリースを待ち望んでいた幻の1曲が奇跡のリリース! MODAJIの曲ではもうアルバム&企画盤の内容を超えちゃってます!素晴らしくメロウ、そして複雑なステップで刻み込むブロークンビーツがかっこいいハイテクフュージョン!当時FコミのAlexがチャートに挙げてた以外この曲についての情報はあまり耳にしませんでしたが、リリースを熱望する声は多かったようだ。なお、AA面は Instrumental Mix となっています。
前作での官能的な女性ボーカル、ディスコ調のハードなビート、ゴスペルの宗教性、猥雑なコラージュ、変態性といった要素はかなり減少し、代わりにエレガンスなジャズの要素を配したスムースなテックハウス~ディープハウス色が表に出た本作。2曲目は Innerzone Orchestra の曲をノーマジーンベルのサックスなどで本格派ジャズファンクへと再構築した超傑作リミックスですが、残念なことに「ワン、トゥー、スリー…」の合図と共にアップテンポになるかっこいい瞬間が削られてしまっている。また、3曲目「Backagainforthefirsttime?」は Moodymann らしいイルな雰囲気で一番気に入っています。後半の産声なんか、まさに Forevernevermore のジャケの赤ん坊が生まれてきてしまったようなヤバい雰囲気醸し出してます。4曲目「LIVEINLA 1998」は野田努の解説にはリヴィンラと書いてありますが Live in LA だと思います。どうなんでしょう?
Jazzanova初のミックスCD、ケースは割れても交換できない。Carol Williamsのようなサルソウルのクラシック、Jill ScottやBahamadiaのようなR&B・HipHopに、近年のクラブヒットやレーベルの実発表曲・リミックスなど新旧織り交ぜたバリエーション豊かな選曲、とはいえ目玉は Jazzanova の新曲(カバー)「Let Your Heart Be Free」でしょう。完璧なタイミングとともに現れる薄く靡くような浮遊感、そして重たくややスローなビートとソウルフルなボーカル。もう何一つ文句の付けどころがない一曲である。だがしかしそれ以上に Dance The Dance の ATJAZZ Remix がカッコイイ!オリジナルの雰囲気を踏襲しつつもよりダイナミックになったイントロから一転、疾走感あふれるスペーシーなフュージョン~テックハウスへ。 ATJAZZ のリミックスでは Kabuki / Tempest も良かったが、それをも超えた。
久々に出会ったハウス寄りの好作品。「Discover The World」の上昇感たっぷりなコード進行と力強く走り抜けるスリリングなビート、そして Passion Dance Orchestra の中心人物 Lars Bartkuhn は実力あるギタリストでもあり、抜群のフュージョン具合。とりわけ80年代フュージョンの影響を色濃く感じますが、特に本作の特徴とも言える随所で遠くから聞こえてくるような透明感のある男声コーラスワークは「Still Life (Talking)」の頃の Pat Metheny を想起させる。NYハウスシーンからの評価も著しく高く、機能性・音楽性ともに優れた Body & Soul系とも共鳴しつつ、 Ananda Project のような黒さを感じさせないヨーロッパ的な端正さもある。
やや異色だった前作から、再び黒くて血の通ったハウスへ。細切れのビートでうまく焦らしてくるクラシック「Shades of Jae」以外は割とスムーズなビートが多く、複数のパートから成る「Runaway」や「I'm Doing Fine」などが聴き所。エレピなどによるジャジーな雰囲気が強い分、逆にドロドロした感じが薄れた気もしないでもないと思いきや、ノンビートの7.「Riley's Song」が病んでて良いアクセントになっています。この奇怪にうねる音はまさしくムーディーマンにしか出せない音だろう。ラストにはアレンジされた「Mahogany Brown」が。全体的に一時間にわたるセッションをそのまま録音したような独特の音の定位も相変わらず良い味出しています。内ジャケの男前な写真も必見。
「Cookie」のような核爆弾級キラーチューンこそ存在しないが、「Fragments」がいい感じだ。ハウシーなミニマリズムの上に散りばめられたエレピなどが細かくアクセントを効かせてぐんぐんとスピード感を強めていく展開で、ジャケの「最徐行」とは裏腹に思わずアクセルを踏み込みたくなる。さらにここから続く「Last Warm Place」が、聴けば聴くほど良い。 Ian O'Brien の Eden あたり、いやもっともっと美しい大人のコズミックアンビエントフュージョン。
有名無名問わず様々なアーティストが参加した未発表ライブ音源集。いきなり1曲目の The Heritage Orchestra - Telescopic の壮大なるオーケストラルジャズにやられます。こやつら何者だ?どうやらアルバムなどはリリースしていない模様。
現時点での最新作である「The New Continent」では「Goodbye Dancing Hello God」という印象的なタイトルのリードトラックがあるが、3曲目で神が舞い降りた。そして、「Images & Anthems Book I」は方向性こそ違えど、豊潤な音楽性と緻密なプロダクションが光っている。さらに過去作「Choreographies」も遡って購入したが、こちらもまた80年代フュージョン魂炸裂の傑作で、とりわけ「First Friendship」はパーフェクトな1曲!