スクエアプッシャーを彷彿とさせる生弾きベースサウンドとせわしなく畳み掛けるスピーディーなドラムの乱れ打ちがかっこよすぎの高速変態ドラムンベース。ムーディーでファンキーなジャズを始めとしてヒップホップ・ブラジリアン・モンドなどがごった煮になったサウンドがとにかく痛快そのもの。仕掛けだらけで過剰なまでに凝りまくった展開も最高です。古臭いジャズのレコードからサンプった間抜けなイントロからいきなりタイトな生ドラムとビンビンのベースがハイスピードで駆けぬける「Giant Jumps」とかエキセントリック。最近はイケてるデザインスタジオ Hi-Res! の音楽を手がけてるようだ。
ほぼノンビートの前奏的な 「nonlin.r」 から緩急つけて高速に切り込むように展開される 「tascel_7」 が、何度聴いてもかっこよすぎ。まさに水琴洞のような美しい響きをもったメロディと、スピード感のあるブレイクビーツの組み合わせが素晴らしい。全体的な作風としては、スローでやや重たいブレイクビーツ+叙情的な空間性のある音響、ということに変わりは無いですが、高速ブレイクビーツフェチとしては 「amine」 あたりの滑らかに駆けぬける感覚や、 「scapen te」 のようなゴシックな重みすら感じさせるディープな音響アンビエントもなかなか好きです。
前作「Atol Scrap」に比べるとブレイクビーツがさらにスローでダーティに深化しており、深い音の響きを聴かせている。中でもオープニングとなる 「Theme」 では暗く沈んだムード、その中を妖しくギラつくようなチェンバロが独特で、また 「The Storm」 でのハープシコードなどの楽器もどこか西洋バロック調の響きを持たせています。その一方で 「Tides」、「Seaside」 のように Christian Kleine 奏でるアコースティックギターや環境音によって幾分メロウな印象も受けますが、特に 「Seaside」 は波打ち際をたおやかなアコギのフレーズが延々と鳴り響いている完全ノンビートの美しい1曲。
Gooom Disquesというレーベルから出たGel:初期の6曲入りEP。明瞭な生音が多く使われているので、アルバム 「-1」 と比較するとまだまだ甘っちょろい感じもする。けど、4曲目 「Silo」 ではまろやかなギター→錯乱気味のセリフコラージュ→気品のあるストリングスというはちゃめちゃな展開から突然カットインされる鋭利なブレイクビーツがかなりかっこいい。全体的な作風としては生音の電子変調はほどほどに、複雑でありながらもグルーヴィーなリズムがなかなかダンサブルだったりする1枚です。
2ndアルバム。ボーカル曲もあり、ジャジーな生音系アンビエントなど、まだ普通っぽい感じもする。しかしその中で唯一異彩を放っているのは、 「Coastal」 という1曲。 迫り来るような冷たい空気感に微粒子がまとわりつくような実験的な1曲は、他に類似しない。これ以降、KID606 「PS You Love Me」 でのリミックスや Vertical Form からのシングル「Renzo」およびコンピ 「Pro Bono Publico」への参加を経て、静謐なミニマル・エレクトロニカへ偏向してゆく。
Kit ClaytonのレーベルOrthlorng Musorkより、Stephan MathieuのFull Swing名義での10インチ作品。これは5タイトル連続リリースとなる[EDITS]シリーズの1作目ですが、 MONOLAKE の36分にわたる長大なるアンビエント 「gobi. the desert ep」 の音源を使用した作品となっています。 プチプチとした短いパルスノイズが連続的に絡み合う中、冷たく透き通るようなドローン音がじょじょに押し寄せ、異世界アンビエンスを作り出す。
フランス発若き才能による先鋭電子音楽。なんでも、デビュー作となる 「Hentai Hardcore」 というとんでもないタイトルのシングルでは WAREZソフトを使っているとか。それはいいとして、日本盤もリリースされた本アルバムは、バックにどこか古ぼけたようなピアノなどの音がゆったりと流れる中、電子変調されたほんわか脱力系メロディやクリアなグリッチ音が飛び交うという、生音と電子音の不思議な交錯具合。 「re(a/c)h'」、「dos_(gelicide)」 (日本盤のみ収録)の2曲はキレのいいバウンシーなビートが跳ねますが、そういった意味も込め、ちょうどジャケットの3つのボールが予測不可能に飛びまわるような、とてもカラフルで新鮮で楽しいアルバムです。
Farben名義でのミニマルでDJライクなハウストラックでも有名な Jan Jelinek、この作品はサンプリングの残響からかすかに古いジャズを匂わせつつ、寸断されたクリック音によってつくりだされるリズムが気持ち良い。チリチリザラザラした質感の上をスコーンと跳ねる快感や Basic Channel風のダビーな四つ打ちリズムへアプローチした曲も良いが、それ以上に控えめなロービートで空間的な音やうっすらと流し込まれたメロディー、展開の妙をじっくりと聴かせる曲が非常に深い。
マイアミを本拠とし、Richard Devine や Otto Von Schirach などヤバかっこいいエレクトロニクスを発信するSchematicレーベルの首領、PHOENECIAのアルバム。冥界の咆哮のような深く冷たいハーモニーが作り出す暗黒世界のアトモスフィア 「Oriaca」 から、ピンポン球を打ち返しているような音が、徐々にリズムを形成していく 「Suite D256」 への流れが極めて鮮烈です。どちらも地底世界で鳴り響いているような音響処理が際立っている。ヒップホップからの影響濃いビートも随所に見られます。
やたら最新鋭の機材と高度なプログラミングによって制作されたという印象のアルバム。内容も複雑極まりなくハイレベルだが、あまりにも緊迫感の連続に耳が疲れて最後まで聴くのは大変。「Lipswitch EP」ではわりとリズムに乗りやすいビートがあったけど、本作ではノンビート多めで、フューチャリスティックかつダークな音響空間が続く。3曲目「Foci Ducplication」は圧巻。1:30あたりから、荒涼としたサイバースペースにおいて最新鋭のデジタル兵器で銃撃戦を繰り広げているようなイメージを喚起させる。
Fumble, Kandisなどの名義でも知られるSenking、この名義での作品はどれも音数は少なくてかなりダブ度が高く、いわゆる深海エレクトロニカの一種といえるだろう。特筆すべきはその厚みのある低音で、底無し沼のような低音域の上を、輪郭のはっきりしない不明瞭な音塊が浮かんでは消えてゆき、ひたすら無彩色な漆黒のサウンドスケープが続いてゆく。あまり多くを語らない曲名などから感じとれる雰囲気に、曲調ともどもけっして日の目を見ない暗さがある。 また、Rastor-Notonからリリースの、21世紀のための12枚というコンセプチュアルなシリーズ「20' to 2000」での1作は、個人的には Senking のベストに挙げたい作品だ。 海底数千メートルを漂っているような、どろーんとした暗いドローン音が作り出すうねりが素晴らしく、細やかな音がリズムを刻む。
2002年の傑作「Tender Love」を先に聴いてしまうとどうにも本作はリズムに切れが無いし、音数も少なくモーフィングするようなウワモノのループもやや退屈で、かなり地味な印象を受ける。とはいえ逆に部屋の空気に逆らわずに流れているようなアンビエント感は強いといえるかも。また、各曲はシームレスな展開がなされており、曲単位はウルトラミニマルながらもトラックの変わり目で転調するのがおいしい。
元 Boards of Canada のメンバーということでかなり注目されているスコットランド出身のクライスト、音の方も BoC~Bolaあたりに近いらしいです。デビューEPの本作はその後のLPほどダークではなくブレイクビーツもスムース。特に暖かみのあるサウンドが深く広がってゆく1.「dream of the endless」がドリーミーで良いです。また、ノンビートの4.「Pylonesque」では、一見するとピースフルなメロディの中にどことなく壊れちゃってる奇妙さが潜んでいる。ラストの1曲もかなり壮大であり、子供の声が使われていところがまたBoCライク。
さまざまな音楽的バックグラウンドをもったメンバーが集まって形成された、ノルウェー発カテゴライズ不能集団。ライブは百戦錬磨というだけあって10人という大所帯による様々な楽器で熱いサウンドを聴かせてくれます。このジャムバンド的演奏をエレクトロニクスで加工した結果、凄いことに。たとえば 「Lithuania」 という曲では、トランペットとヴィブラフォンがメロディーを奏で、バックにエレキギター、さらに中盤から徐々に乗ってくる四つ打ちリズムとストリングスが盛り立てるというふうに、ジャズ、ロック、エレクトロニクス …色々入り混じって一筋縄でいかない感じがします。基本的に即興よりも作曲というだけあってメロディアスですが、しかし曲者、UKからはNinja Tuneがライセンス発売するというのもうなずけます。また、リズムへのアプローチも興味深く、スピーディーで重たいドラミングの 「Animal Chin」 や、生で叩いた音を編集して高速ドラムンベース風に仕立て上げた 「Midet」 がスリリングでかっこいい!「Magazine EP」の1曲目 「Jaga Ist Zu Hause」 でもやはりスピーディーなドラムンベース風リズムが聴けます。ちょっと哀愁漂わせるトランペットがメロディーを歌い、ロック色強いバックがじわじわと盛り上げる1曲。
こいつはおちゃめな天才か?ハッピー、ファンキー、グルーヴィー。チープなジャケのイラストからはまったく想像つかないめくるめくエキセントリックワールドを展開しています。多彩なアイディアがところどころに盛り込まれおり、大変ユーモラスでアイロニーで遊び心にあふれた楽しいサウンド。妹のボーカルもナイス!この作品のためにすべての楽器を自分で習得・演奏したり、細部まで凝りまくった作りこみがあるからこそ成し得た、どこにも属さない個性が光る完成度の高さ。そりゃHerbertもビックリだわ。
怪獣モンスターみたいな名前のモキラ、本名 Andreas Tilliander 名義でも2枚のアルバムをリリースするなど、かなり多作のアーティストです。この Mokira 名義ではクリックホップ的なリズム構築に焦点を置いているようで、アルバム全編にわたり寸断されたクリック音によって構成された隙間だらけのスローなリズムが、ひたすらミニマルに静と動を繰り返しています。特に 「Snegsted」 では、かすかなハーモニーを匂わせる浮遊するような上モノに対して、鋭利に刻まれるビートがかっこいい。また、電子音特有の冷たさを具現化したようなジャケが非常に良い。
LabradfordのメンバーであるMark Nelsonによるソロユニット。ギターサウンド中心のLabradfordとは異なり、エレクトロニクス色強い独自の世界を追求している。 2ndアルバムではボーカルやコルネットをフィーチャーしたり、まだ演奏音楽的雰囲気を残しているものの、 3rdアルバムとなる本作は、UKからは Vertical Forms からリリースされたことからもわかるように、より一層のエレクトロニクス化が進んいる。音の向こう側を探ってもいっこうに人間の気配を感じとれないほど冷えきった無人の質感であり、 ビートと呼ぶにはあまりに微弱な、パルスに近い鼓動などが、耳に意識を集中させてはじめて聞こえて来る微細な揺らめきのようなサウンドテクスチャへ溶け込んでいる。
最小限の音数、最小限の展開で構成されたウワモノはミニマルですが、穏やかな浮遊感に富んでおり、「Tender Love」という素敵なタイトルそのままのほのかな和みを感じさせてくれるシンプルなメロディーが非常に気持ち良いアンビエント空間をつくりだす。その一方で、コンピ「Clicks & Cuts」シリーズに代表されるクリックホップ~クリックハウスへのアプローチも強いですが、SNDの特徴的なのはチリチリザワザワしたビートではなく非常にクリアでシャープなビートが変則的でありながらもテンポ良く機能している。リスニングとしてもフロアでも効果を発揮しそう。端正な雰囲気が素晴らしい傑作。
ラテン語で「公共の利益のために」という意味のタイトルらしい。まあタイトルにさほど意味は無いでしょうが。 Vertical Form 周辺の4組のアーティストが3曲ずつ提供したコンピです。 Pan American は静謐なギタードローン中心ですが、ボーカル入りはちょっと萎える。 Corker/Conboy はソフトなロックでやってることは普通っぽいけどなかなか質は高い。 Kim Hiorthoy は古ぼけたメロディーが特長的。 Iso68 はダブルベースやピアノを用いたジャジーな音ですが、こういう音だったら他にもっといいのたくさんありそう。けど、ラストの1曲はメロウで美しいです。
Monolake, Kid606, Bola, Funkstorung, Vladislav Delay, Isan, Mum... 最近注目を集めるUKの Vertical Form より、とにかく豪華なメンツを集めたコンピ。中でも Monolake / Rain が良い。彼らしい空間に響き渡るようなブレイクビーツが美しく、さながら洞窟の中を滴る水のよう。また、Isan / Dirno, Nano, Keel も、電子音ユートピア的な世界とクリック系のロービート。 Thomas Fehlmann / Luftikuss は KOMPAKTからの既発曲ですが、恍惚のアンビエントと 滑らかな四つ打ちがリズムを刻む名曲。一方フィンランドの奇才 Vladislav Delay の 「Cene」 は、LUOMO名義よりのかなりファンキーなハウスですが、独特のモワモワしたダビーな音使いで独自の世界を作り上げています。上記以外はノイジーなブレイクビーツものが多く、あまり聴いていません。なお、CDは限定版らしく、レアかも。
expandingその2...このレーベルは美メロ+精巧なビーツという組み合わせの良作が多いようだが、特に本作は透き通るような美メロが澄み渡っており、どこか悲哀のある佇まい。3. Koozbane や 4. Double を中心に、まばゆいまでの美メロに線が細く小刻みなビートが控えめに組み合わさった曲が最大の聴きどころであるが、実はノンビートの曲もなかなかのもの。オープニングの1曲もまさに夢の中にいるような雰囲気であるし、終盤10曲目での夢遊するアンビエントも、あえて特筆すべきであろう。
このアーティストは初めて知ったが、冒頭の4曲ほか7曲は前出の「CTRL EP」からの収録らしい。 Detroit Escalator Co. ほどディープでは無いけど、デトロイト系の未来的でクリアな透明感が特長。全体的にはビート中心ということで Future Beat Alliance あたりを思わせるが、それを数段上回る精巧かつ多彩なブレイクビーツ構築が素晴らしく、本作の核といえるでしょう。特にアップテンポな変則ビートフェチの人には3.や15.あたりがたまらない。ただし、曲数がやたら多い分1曲あたりが短いのが難です。個々の曲をもっとじっくりと聴きたかった。ジャケットは3つ折り型デジパックで、グラフィティ風のジャケットアートもかっこいいです。
昔の医学書から引用してきたような何とも妖しげなジャケット。暗闇で鈍い光を放つ胚?から広がる脈のような内ジャケは美しい。音の方は前作のEPよりもだいぶ暗いながらも勇壮なメロディがあるのが最大の特長でしょう。各所でダースベーダーのようなエフェクトを施されたボイスが多用されて、暗さに拍車をかけています。また、3.「eezeebreeze」や6.なんかのアナログな質感のパッドがまさに Boards of Canada的な夢幻パースペクティブで美しく、特に3.はきらめくようなメロディがじわじわと盛り上がる展開も良くて本作一明るい。マスタリングに Bola がクレジットされているが、時折ざらざらした音質やガチャガチャしたブレイクビーツが過剰であまり好きではない。
gel:名義でのデビューアルバム 「-1」 がかなり衝撃的だったフランス発の若き才能、今回は Mum や Sigur Ros など大物リリースが続くUKの FATCAT からのリリース。日本盤もすでに発売されています。パッと聴いた印象では、gel:の流れを保ちつつも、ボーカルを起用してのシャンソンなどクラシカルな要素も取り入れ、より一層のレトロフューチャー感覚が増しているようです。それと同時に楽曲の構造の複雑さも増して、かなりの激しい解体・構築が繰り返された模様。 gel:-1に比べてけっこうノイジーな曲も多いかも。
先行EP「avec the exposurues」に引き続きリリースされた本作。今回は前作 「Loop-Finding-Jazz-Records」 に比べて細かく刻みすぎないフレーズ単位でのサンプリングも多く使われているため、 「if's and's and but's」 のようにハウシーな曲はメロディアスになってベースも厚くなり、グルーヴ感が増した。また、フィルターを通したような変な声ネタが多く使われていますが、前作の時点で良い部分はほぼ全て出尽くした感じもあります。
expandingその1...透明感ある音使いとブレイクビーツのコンビネーションが光る一枚。特に1曲目「vacado」では飛翔感あふれるウワモノと、相反するかのような粗めのメカニックなドラムがドカドカと叩き付けられる様がかっこいい。あと14.「Palm-Desk-Lap」も好きです。しかしどうしてもこの手の小曲集的なアルバムだと、この曲はいいがこの曲はダメだ、といった感想になってしまいますが。
この2人、どちらもテックハウス~クリックハウスシーンではかなり有名な存在のようだが、今回はじめて知った。本コラボ作品のオープニング曲となる「Towards Another」は暖かいウワモノやメロウなギターカッティングが非常に気持ち良い1曲。ブレイクビーツのリズムに混じって現れるピンッという音が、一見ストレンジで不協和な要素に見えつつも実は効果的なリズムアクセント(※1)となっている。また、本作はノンストップ構成となっているのもうれしいところ。メロウな生音を導入したのは1曲目のみであるが、それ以降は FARBEN あたりに近い感じのディープでミニマルなテックハウス寄りのアプローチ。途中エクスペリメンタルなリズムを混ぜつつ、ハウスを基軸に最後までグルーヴ感を保っている。
相変わらず目が離せない12Kから大物の新作登場。なにやら面白げなアルバムタイトル・トラック名であるが、今までどおりのミニマルな構造を残しつつも、リズムはおとなしめで若干ストーリー性を意識した作りとなっているようである。前半1~6は一続きの構成で、メロディもビートもほとんどないやや退屈な展開である。しかし7曲目以降は曲のバリエーションがぐっと豊かになり、ちょっとかわいらしい感じのメロディや細かいリズムもあって楽しめます。
元祖クリックホッパー、また音数少ないストイックな作りなのかと思いきや、意外や深さと広がりを感じさせる作品。これはうれしい誤算です。アンビエント寄りとはいえ耳当たりがいいだけの退屈な音ではなく、多種多様な音素材と機材によって細部にわたりエディットされており、凝った曲展開など楽曲的にも優れている。もちろんグリッチ/グラニュラーの要素も重要であり、2.では凍てつく高密度粒状電子音の刺激に包まれつつMokiraらしからぬ細かくて速いリズムで進んでいく。また、メロディアスな音がループしながら溶解していくような曲などなど、色々と耳を楽しませてくれる作品である。全曲ノンストップの構成で夜中にじっくり聴くとハマる一枚。
まずいきなり1曲目でやられる。壮大なバックトラックに良くマッチした浮遊感ある女性ボーカル、そして駆け抜ける変則ブレイクビーツ。こりゃ間違いなく持ってかれますな。泣けます。かといって歌モノばかりでベタになることもなく、多くは Arovane あたりに近いスローで硬いビートのIDM中心。どれもキレが良くて品質高いが、特に8.が本作中最高にかっこいい。天使のようなボーカルが深くエコーする空間的なイントロから一転、循環メロディとともに空間を切り裂くかのように重たいベースと叩き付けるような硬質なビートが出現。また、4.や10.でのパタパタとしたせわしないリズム構築もナイス。逆にノンビート曲はイマイチだった。
4,7のようにアップテンポなビートとベースラインを強調した密度のあるグルーヴ感がかっこよく、その一方で5,8のように澄んだウワモノが作り出す控えめな浮遊感に軽めのハット中心で構築されたリズムパターンも凝っている。一音一音が研ぎ澄まされており、クリアなキレ味。 Mokira の新作もそうだが Type Records はジャケも綺麗でサイトも充実していてかなり好きです。 aeiou によるレーベルサンプラーミックスでは既発作品のおいしいところが聴け、さらに Julien Neto などの今後のリリースにも期待させてくれます。
女性アーティストAGFとVladislav Delayのコラボ。ワルシャワのサイトで試聴し、これはDemo(n)Tracksの流れを汲んだDelayの異次元空間とAGFのウィスパーボイスとが融合か?などと期待しながら想像をふくらませたが、フタを開けてみればそれ以外の曲は案外おとなしく地味な印象。またしてもワルシャワマジックかよ。厚手のブックレット付で、アートワークは非常にかっこいいです。
ほんと無料でいいの?と言いたくなる様な大盤振る舞いSutemosから、今度はアンビエント・ミニマルテクノ・ミニマルダブのコンピがリリース。なんと YAGYA が2曲提供している。しかも Rhythm of Snow の続編ともいえる雪に覆われたテクノである。これは迷わずダウンロードすべきでしょう。それ以外にも同じくForce Inc.からリリースしていたOzy や、先日アルバムを出した Marsen Jules のより実験志向の名義 Krill.Minima なども参加。
新鋭ネットレーベル "-N" の設立第一弾となるコンピがリリース。私がライナーノーツを執筆しております。ぜひ読んでダウンロードして聴いてみてください。
http://minusn.com/ja/mn001.html