THE KLF : Chill Out

1週間で作ったシングルがUKチャートで1位になるものの、数々の奇行で音楽産業に与えた衝撃は底知れず (※1) 、著作権解放戦線こと The KLF の90年のアルバム。アンビエントの歴史に名を刻む1枚として未だなお語り草になるこの作品、実際純粋なアンビエント的要素も強いものの、スチールギターが夢見心地のメロディーを奏でたり、アンビエントハウス的なリズムをとったり、モンゴルのホーミー族の呪術的な歌声があったり、どこかでラジオが流れているようなサンプリング・コラージュがあったり、ちょっと遠くでエルビスプレスリーが唄っていたりと、とにかく一口にアンビエントとは括りきれない不思議なサウンドが延々と鳴りつづけています。特にフィールドレコーディングが効果的に使われており、 どこかのある特定の風景を想像させるわけではなく、どこにも存在し得ない現実と空想の狭間のような不思議な空間を想像させ、さらに列車の音がそんな空間を次々と移動しているかのような聴覚体験をさせてくれる。眠れない夜なんかにアルバム通してじっくり聴きたい1枚。

GLOBAL COMMUNICATION : Pentamerous Metamorphosis

80年代末に結成し、RELOADなどの名義でテクノをリリースしていた Tom Middleton & Mark Pritchard の二人組が、CHAPTERHOUSE というバンドの音源を用いてアンビエントへと再構築したもの。初出は93年のそのCHAPTERHOUSE の「Blood Music」の限定盤に付属された形だが、98年に単体でリリースされた。「76 14」に比べてダークで重みがあり、ゴシックな雰囲気が美しくエレクトロっぽいブレイクビーツの「Alpha Phase」、ひたすら幽玄な空気が流れているような壮大な「Beta Phase」、ボーカルがうっすらと溶け込んだ「Epsilon Phase」など、全5曲。

V.A. (Rising High) : CHILL OUT OR DIE!

選曲およびミックスを担当した Mixmaster Morris を中心に、 Pete Namlook, Atom Heart, Dr.Motte といったシーンのキーパーソンが一堂に会した Rising High の傑作コンピレーション。無機質なシンセサイザーが森の奥深くに着陸する巨大なUFOのようなビジョンをつくりだす幕開けから、雄大なるハーモニーが美しい初期 Namlook 屈指の名曲 Pulsar、不思議な魅力をもったスローなテクノを聴かせる Ongaku 、複雑なリズム構築を浮遊感あふれるメロディに溶け込ませた Bedouin Ascent 、ラストの山場はミニマルなアルペジオが美しい10分間にわたる壮大なトランスワールド Dr. Motte - Euphorhythm、そしてフィールドレコーディングがリスナーの想像力にはたらきかける Friends, Lovers and Family で静かに幕を閉じる。ミックスの流れも最高です。

BEDOUIN ASCENT : Science, Art And Ritual

BEDOUIN ASCENTは90年代中頃にRising Highから2枚のアルバムをリリースしたほか、いくつかのコンピに参加し、その後ジムオルークと連名で Tortoise のリミックスをするなどし、現在も細々であるが活動してるアーティスト。本作は94年の1stで、ポストアンビエントテクノ的なポジションを切り開いた傑作。古代の神秘ムードと荒々しく緻密なブレイクビーツによる近未来とが混在した独自の時空感覚を有している。神聖としか言いようの無い美しい小曲アンビエント 「Polarity Healing」 から続いて展開される 「He is she」 は、 浮遊感たっぷりなメロディー、練られた曲展開、ポリリズミックなブレイクビーツと、当時のテクノというカテゴリからは明らかに逸脱した音。むしろ今の耳にも新鮮に聞こえる。ラストの1曲は23分の大作で、総じて79分超のボリューム。古代と未来とが混在したような独特の世界観を有し、美しくもあり力強くもある。そして突如現れる音の歪みや割り込み、趣向を凝らせた展開により、まったくもって退屈させないノンストップ80分。特に1~4の流れが秀逸。

GLOBAL COMMUNICATION : 76 14

「Pentamerous Metamorphosis」をリリースした縁でDedicatedレーベルと契約し、94年にリリースした作品。この「76 14」では、モールス信号によるアーティスト名表記、数字による各トラックの区別がされており、これが何よりも想像力を野放しにして聴くべき音であることを物語っている。「14 31」―静かに時を刻む音から、徐々に姿を現すメロディーが感動的な14分間のメディテーション。「9 23」―Heavenlyなハーモニーがまばゆい美しさを放つ、スローなブレイクビーツ。「9 39」―無機質に響き渡る高音が、さながら宇宙船に乗って漆黒の闇をさまようかのようなイメージを喚起させる。途中各国の言葉でナレーションされる通り「音の媒体を通して伝えられた感動表現」であり、その感動は「5 23 (MAIDEN VOYAGE Spiritualized Main Line Mix)」で最高潮に達する。

V.A. (Rising High) : CHILL OUT OR DIE! 3

Mixmaster Morrisによる選曲の傑作コンピ「Chill Out Or Die!」の続編。あまり知られていないだろうが、Vol.2はグロジャケで、このVol.3、そしてVol.4まで続編が出ている。Vol.3は Caspar Pound による選曲&ミックスですが、このレーベルらしいややダークな雰囲気が強くて完全に夜向けです。Vol.1以上に。特に後半なかなか良い曲が続く。 Caspar と同レーベルの重鎮 Laurence Elliot Potter によるユニット The New London School of Electronics は珍しく生音志向でまったりとしたギターの美メロが聴ける。同じく エリオット絡みの次の曲、 Neutron 9000 / Empire はディープなドローンで、一気にコアなアンビエントへと向かう。そしてこの流れでラストに Bedouin Ascent をもってくるとはまた通ですね。今回は思いきり原始回帰したようなトリッピーなサウンドで、中盤から入ってくるメロディが妖しげで最高です。

DJEN AJAKAN SHEAN : Crows Heading For Point Blank

Amplexusの3インチCDシリーズは収録時間は短めだがどれもクオリティ高い。また Steve Roach, Michael Sterns といったベテラン大物アーティストの参加もあったりする。本作は Vinda Obmana プロデュースによる95年の作品で、温もりのあるシンセが美しく、深い残響に包まれるような自然派アンビエント。中盤からややエスニックな打楽器群によるリズムが現れる。全1曲21分。ちなみにこのシリーズはCDは小さいけどジャケットは大きくて豪華だったりします。

JOHN BELTRAN : Earth & Nightfall

Carl CraigのレーベルRetroactiveから90年代初頭にデビューしたヒスパニック系アメリカ人 John Beltran による R&Sからのリリースとなる1stアルバム。デトロイトテクノ・デトロイトハウスをベースにしているが、「Sub-surface」でのイビザチックなスパニッシュギターや「Synaptic Transmission」でのエスニックなボーカルなど、アンビエント、ラテン、ニューエイジなどの要素が混在している。しかし部屋でアンビエントとして聴くにはハイハットにしろキックにしろビートがやや太すぎ。本作で最大の聴きどころは、ファットでグルーヴィーなビートから吸い込まれるようにハーモニックな楽園アンビエントへ展開する7~8曲目の展開でしょう。

SPEEDY J : Lanzarote

WARPのリンスニングのための電子音楽というコンセプチュアルなアルバム「Artificial Intelligence」でもおなじみSPEEDY Jです。「A.I.」シリーズではブレイクビーツ 「De-Orbit」、そして「Symmetry」が有名ですが、その後リリースされた彼の2ndアルバムである「G Spot.」において、極めて美しい電子的アンビエントを披露しています。インタールードの 「Fill25」(Fillシリーズはどれも素晴らしい)の幽玄なる電子音から続いて展開される 「Lanzarote」 は、ゆったりとしたメロディーのループと静かに織り重ねられるシンセのレイヤーが脳内に小宇宙的音世界をつくりだす電子音響。クライマックスへ向けて徐々に盛り上がってゆく。

SUN ELECTRIC : 30.7.94. Live

とことんハッピーにさせてくれる黄色い傑作ライブ盤。フランクフルト周辺のFAX/Namlookを「陰」のアンビエントとすれば、こちらベルリン周辺の Sun Electric や The ORB は「陽」のアンビエントとのことです。前作 Kitchen とはガラリと作風が異なる60分3曲ノンストップでの野外ライブ録音だけあって解放感は抜群。美しく浮遊する無重力空間は、ライナーノーツの言葉をそのままパクりますと「音の粒子が空に向かってキラキラと光りながら拡散していく感じ」。さらにアッパーに加速してゆくようなリズムによって太陽へ向かって一直線に吸い込まれていくかのような展開は、まさに恍惚状態へ持ってかれる。3.「northern lights #5」でクラシックのサンプルが使われていることに関してライナーで長々と語られているが正直ウンチクはどうでもええ。様々な音のとろけぐあいがまた良いのである。

JOHN BELTRAN : Ten Days of Blue

アンビエントの名作として長らく再発が望まれていたが、2002年についに再発された。前作での重たいビートやジャズの要素などはほぼ完全に影を潜め、アンビエントを前面に押し出している。1曲目がいきなりノイジーなビート物で驚かされるが、そんなのも許せちゃうくらい素晴らしい曲が多く、「The Sky EP No.2」とともに彼の最高傑作でしょう。何と言っても彼の作品の中でも最高に美しい 静謐さと雄大さを兼ね備えた「Collage of Dreams」を始め、深遠なハーモニーを聴かせる「Soft Summer」や、「Gutaris Breeze (6000km to Amsterdam)」などでは、以前のような重たいブレイクビーツを用いずとも実にリズミカルでミニマルなメロディーの連なりが不思議と疾走感を感じさせる。この散りゆく花のような美しさと儚さの同居する孤高のメランコリーは、今後も輝き続けることであろう。

V.A. (avex uk) : CHILL OUT FREE (Mixed by Phil Mison)

ホセパディーヤに並ぶ元 Cafe Del Mar の大物DJ Phil Mison による96年の2枚組MixCD。1枚目はたいして良くないけど2枚目は貴重音源満載の充実した内容。Discogsやネットで調べてもほとんど情報がない無名作品ばかりで「イビザの美しいサンセットを思わせる」みたいな日本のお洒落ショップが好きそうなベタな形容詞のイメージとは全く違う。 Symetrics(実は Charles Webster!!)の浮遊するウワモノと背後のダビーな音像をゴリゴリと刻んでくる金属質なブレイクビーツ ~ Boothby(実は Phil Mison) ~ アナログノイズに覆われた味のあるkey.のループに変則リズム導入の瞬間がかっこいい Alex (多分Gopher?) ~ Primitive Painter(実はSensorama)という流れはことごとくハマる。さらに John Beltran、そして終盤は Global Communication / Maiden Voyage へ。

WINX : Left Above the Clouds

「Don't Laugh」という笑うに笑えない迷曲で有名なWINXだが、このアルバムにそのようなクラブ受けするトラックを期待すると全くの大外れ。いや、むしろ外れで良かったけど。逆にこのアルバムの魅力はとても多彩で奥が深い。冒頭からある意味クロスオーバーの先駆けともいえそうな、美しいポエトリーリーディングと叙情性たっぷりなギターが織り成すフュージョン。そして人が砂浜を歩いてゆき、扉を開けて中に入ってゆくというイマジネーションを刺激する演出とともにスタートする2曲目、「You Are The One」は本作中でも格別にかっこいい1曲。分厚いボトムと透き通るような高音域に恍惚です。また、本アルバムの魅力として、デトロイトテクノに通じるような美しいシンセとハウスやエレクトロなど多彩なビートのコンビネーションによるところが大きいが、特に「Lifting Rocks For Crayfish」は彼の持つ静的な面が最も良く現れた1曲であろう。細かく刻まれるブレイクビーツに静謐なアンビエンスがゆったりと広がってゆく。同じくアンビエント性の高い「Topfe & Pfannen」ではバンジョーらしき音の断片にブレイクビーツのリズムを刻ませ、後半にはジャズタッチのメロディまで取り入れるという何とも個性のあるアーティストだ。実験性といえば曲間の非常に短い小品などでも、例えばいびきの音や雑踏の喧騒、ガラスの割れる音や電子音、ノイズなど色々用いているところも興味深い。これだけリスニングにも適した音が多いものの、ラストは強烈なアシッドトリップを促すとんでもなくビキビキのブレイクビーツ。しかし、それさえもWINXの個性として違和感無くアルバムへ融和させているところがまたすごい。

越智義朗 : Aqua

日本は環境音楽やニューエイジのシーンが発達している国ですが、この系統の音楽を「癒し」と解釈し、イージーリスニング、つまり聴き流せる音楽と称されることが多いです。だが、越智義朗の 「AQUA」は、水の音や煌くような抽象的な電子音が水面で波紋を描くかのように広がり、α波によるヒーリング効果というよりもむしろ想像力を刺激し、活性化させてくれます。越智義朗以外には、岡野弘幹 / Moon も大好きです。幻想的なメロディーを奏でるフルート、静かに絡む琴や風鈴の音色、ディープに流れる音の波。特に3分35秒における音の微妙な揺らぎが素晴らしい。この曲からDJ CAM 「Angel Dust」へのMixが最高にドラマティック。

A REMINISCENT DRIVE : Mercy Street

時に絢爛に咲き誇る花のごとく華やかで、時に悲哀に満ちた美しさを湛え、時にちょっとねじれたユーモラスもありというフランスならではの芸術感覚に満ち溢れた極上のアンビエント~ラウンジテイストの傑作。オープニングの 「Life is Beautiful」 ではアンビエントのひとつの醍醐味ともいえる奔放に流れるシンセ・ストリングスが幾層にも織り重ねられてゆく様で、人生という名のひとつのドラマを生み出している。 また、「Like Twins」 や「Footprints」では、ダビーな空間の広がりをみせるピアノの美しいメロディーがメインとなり、 「New Jerusalem」 もまた時がたつのを忘れそうな、ゆったりとした和みのメロディー。

JOHN BELTRAN : Moving Through Here

R&Sからの3rdアルバム。これは正直John Beltran の作品の中では唯一ほとんど聴く気にならない。アンビエントからは離れ、ジャズ・ラテン・サンバなど彼の音楽的バックボーン丸出しにしているが、何しろブレイクビーツがハードすぎてリスニングには適さない。ボーカル物も多くやっているが、逆におしゃれでドラムン取り入れてみました的なそこらへんのクラブサウンドへ成り下がってしまった感じです。まったく何を狙ったのかさっぱりな1枚。

PLACID ANGELS : The Cry

John Beltranの別名義で、「Ten Days of Blue」と同じく Peacefrogからのリリースとなる。実際ジャケの雰囲気も似ているが音の方も似ており、アンビエント性の高いものとなっている。優雅なメロディーやハーモニーが美しく、「Ocean (London Mix)」 や 「Fate」 といったグルーヴ感のあるブレイクビーツに美しい女性ボーカルのループを乗せた曲も良いが、「Now And Always」や「Casting Shadows」のハイハットが細かく刻まれるブレイクビーツに雄大で華やかではあるがどこかもの悲しさも感じるような佇まいのアンビエントが好き。

V.A. (Quango) : DIMENSIONS IN AMBIENCE 2

Drawn From The Deep Ambient Vibe of The Nocturnal Hours - A Meditative Dreamscape. 巷にあふれ返る「AMBIENT…」と称した輸入物コンピレーションの多くは実はトランスだったり普通のブレイクビーツものだったりして真のアンビエントは期待できないのが世の常ですが、これはなんともありがたいことに JOHN BELTRAN / Collage of Dreamsが収録されているので買いました。というか忘れた頃に家に届きました。さらにはR&S傘下Apolloからのリリースで知られている DAVID MORLEY / Frozen も良く、ミニマルに繰り返されるせつな系メロディーが雄大なシンセとあいまって夜想的アンビエンスを作り出します。

A REMINISCENT DRIVE : Life is Beautiful (F100 Mix)

アンビエントの傑作として間違いなく3本の指に入る名曲中の名曲、あの 「Life is Beautiful」 が、なんと生演奏を導入したバージョンに! 徐々に音が重なり合ってゆったりとダイナミックに展開してゆく様はそのままに、あの印象深きメロディーラインを美しい弦楽が奏で、ビブラフォンやナレーションを用いたバージョンとなっています。 F-Communications の100周年記念コンピレーション 「Live And Rare」 に収録された至宝の1曲!

TUU : The Frozen Lands

Amplexusの1000枚限定3インチCDシリーズ。今のところこれがシリーズ最高傑作。全3曲ともほとんど生気がなく、この世のものではないようなイーサリアルドローンサウンド。1曲目は天上世界へ導かれるような神秘的ソプラノボイスと霊気が漂っているような静寂感が続き、終盤の重厚に鳴り響くゴングとともに消えてゆく。3曲目は転じてダークアンビエント。一定周期で押し寄せてくる地響きのような低い振動音から、死者のうめき声が浮かび上がってくる。

GAS : Pop

MIKE INKとして古くからアシッドテクノなどのシーンに大きく関わってきた Wolfgang Voigt が一転アンビエントへと転じたプロジェクトGAS。すでにMille Plateauxから4枚出していますが、こちらは2000年リリースの4thアルバム。「Pop」というタイトルから連想されるように、彼自身も TAL として参加している「Pop Ambient」シリーズでも聴けるような、厳かで優雅な自然派アンビエントが気持ち良い一作。ふわふわとした軽さではなく、ダブ的な残響に重さがあって、深みのある音を聴かせてくれる。2曲を除いてノンビート中心の構成ですが 4曲目の緩めのビートの曲が最高!深い広がりのあるビートが安静時の心的リズムにも馴染みやすく、リラックスさせてくれます。

JOHN BELTRAN : The Sky EP No.2

詳細不明ながらマニアックな人選で見逃せないシリーズ、「The Sky EP」にあのJohn Beltranが登場!どこか爽やかなそよ風が吹き抜けてゆくような疾走感のあるモノトーンアンビエント 「Petra」が大変素晴らしいです。「Collage of Dreams」と似た音色が使われいてるので懐かしさも感じますが、精神世界的な「Collage of Dreams」とは違い、こちらは夕暮れ時にさしかかったような空を眺めているような暖かい情景を描き出している。また、「Watercoloured Dreams」はアルバム「Americano」収録の同名曲とはまったく異なる内容となっていて、こちらもまた「Ten Days of Blue」を彷彿とさせるリズミカルなメロディーの夢想アンビエント。

PUB : Summer

「Summer」1曲のみのEP、とはいえ全部で約60分というボリュームです。なんといってもオリジナルが最高でしょう。柔らかな光が差すようなダビーで美しい空間を突き進むかのごとくリズミックな展開をしてゆく18分という長めのトラックです。リミックスは Arovane, Vladislav Delay などで、Arovane Amx は1と4が収録されていますが、4曲も作ったのか?がんばるねー。特にAmx 1はかなりかっこよく、オリジナルのシンフォニックな高音を引き継ぎつつ、ミッドテンポへと生まれ変わっています。Delay によるリミックスはほとんど Anima みたいな混沌とした音像が特徴。

THE DETROIT ESCALATOR CO. : Black Buildings EP

工業都市デトロイトの最深部へと直結するエスカレーター。あらゆる感情を深く吸い込み、モノトーンの風景を描き出しながら下ってゆく。ひんやりとしたコンクリートのような質感ただよう中、ドラムやハイハットの音が延々と鳴り響いています。この、ダブのエフェクトによってつくられた音の遠近感が良い。ジャケットやタイトルに示唆されるように、黒いビルが立ち並ぶかのような冷たくひっそりとした佇まいですが、強い意志をもった孤高の音楽。小品を含めた全7曲収録のこのEPは次回作からの先行EPですが、96年の1st.アルバム「Soundtrack 313」の曲などを編集したアルバム「Excerpts」もリリースされています。

THE DETROIT ESCALATOR CO. : Black Buildings

ダブのディレイ効果によってもたらされる音の立体感には、リスナー自身がさまざまな拡大解釈を忍ばせることができるが、この Detroit Escalator Co. のサウンドに拡大解釈を行うならば、それはビルの建ち並ぶ都市の夜間の空気であろうか。もちろん「デトロイト」「黒いビル」というキーワードが強く連想させているのも確かであるが、深々としたハイハットの音や壮大に広がるパッドに、コンクリートのような冷たさと構造化された現代都市を想像せずにはいられない。また、それと同時に無機質な中にも秘めたる生命感が宿っていることも示唆している。このデトロイトテクノからアンビエント・ダブの要素を濃縮還元させたようなサウンドは、すでに 「Black Buildings EP」 で確立されているが、最良の部分はそちらのEPの方でも大方味わえることができます。

YAGYA : The Rhythm of Snow

アイスランドのレイキャビクから届けられた、素晴らしきアンビエントサウンド。心地良い自然音と微細な電子音がほどよく溶け合って深い残響音となり、美しい調和を生み出す。そして、深々と降り積もる雪のごとくミニマルに反復するリズムは、いつしかリスナーを幻想の世界へと引き込んでゆき、気づけばそこには果てしなく続く白銀世界のような広大な音像風景が展開されてゆく。包容力のある音使い、アーティストやトラックの匿名性、完全に統一された世界観に美学を見た!浮遊感と疾走感のコンビネーションで、一点の翳りすらなく、アンビエントテクノの一大傑作でしょう。

TRUE COLOUR OF BLOOD : Absence

我々が「ギタープレイヤー」を思い浮かべた時、ロックのギタリストがリフやソロを演奏するような伝統的な概念に陥りがちである。否! Eric Kenser のような才能あるミュージシャンが、濃密な流体サウンドを作り出すためにギター「のみ」を用いたように、もうひとつの次元が存在する。暗黒のドローンに美しいメロディが重なり合ったダークアンビエント。反響する音のレイヤーは、未知の世界を想像させるだろう。以上 http://www.eibonrecords.com/ から引用。リリース元の Eibon Records はイタリアのノイズ・メタル系レーベルのようだが、取り扱ってる店を知らん。

BIOSPHERE : Autour de la Lune

元の音源は仏のラジオ向けの、「Around The Moon」。1曲目はSF的メロディとともにゆっくり展開する長い曲。短波ノイズに紛れて遠方から民族的な歌らしきものが聞こえてくるような3曲目を挟んで4曲目以降は非常に暗く地味になり、ひたすらウーファーを揺らすシンプルな低音ドローンが続いてゆく。その結果としてほとんど何も見えてこない殺風景なアンビエントとなっている。時々ホラーな感じもあり。

WILLIAM BASINSKI + RICHARD CHARTIER : s/t

Chartierが作った素材をBasinskiがエディットするという形で行われたコラボレーション。1.は初めは「The Garden of Brokenness」というタイトルがあったらしいが、混沌としていてほとんど廃墟のような荒んだ空気を感じる。2.は圧巻のスケールを誇る長大な神秘ドローン。冷徹でありながらも美しく繊細。 Deupree のアンビエント作品は日中部屋流しっぱなしでも気持ちよいけど、それとは対照的に本作はピンと張り詰めた緊張感・空虚感があり、静かな夜にじっくりと聴き込むべき作品か。

ARC : Arcturus

クラシカルなアナログシーケンサーや巨大なモジュラーシステムによるリアルタイムの演奏。確かに往年のFAXを思わせるスケールのデカい音である。「Arcturus Part2」終盤のスピード感ある展開がかっこいい。

OYSTER : Oyster

Fukk God Lets CreateなるレーベルからドローンアンビエントのMP3作品。もはや感嘆の域。 ― 繊細なメロディと微かなハーモニーを有するテクスチャを折り重ねた、フロリダ発の作品。時に軽やかに浮遊し、時に重くダークに、Oysterは音の中の音を探求してゆく。厚みのあるドローンに包まれた淡いメロディパターンは、あたかもレイヤー間を行き来するようである。(紹介文を一部改変)

WILLIAM BASINSKI : Silent Night

荘厳な雰囲気を作り出す雄大なシンセサイザーと重厚な低音のループに、ザワザワとしたヒスノイズが延々と続いてゆくローファイな質感。60分一曲といっても実質40分間であり、安らかに眠れとばかりに緩やかにフェードアウトしてゆき、残りは余韻の展開。ケースは無く、紙にCDを挟んだだけの簡易包装となっている。