AGENT K : Feed the Cat
本名Kaidi Tatham名義で先行リリースされた2つのシングルが、良いには良いけどちょっとベタな感じだった上に、ジャケが濃いというくだらない理由で今まで聴いていなかったこのアルバム。しかしフタを空けてみれば、そんな予感を大きく覆す実にクールな音なのでした。というのも、ミニマルに展開されるグルーヴに、クールなテクノ的感覚がちらほらしているのです。澄んだストリングスとCarleen Anderson の美しい歌声が美しい 「Ride Away Getaway」 でのブロークンに刻み込まれる変則リズム、また、本作一のミニマルトラックである 「Thy Lord」 や、フリースタイルなボーカルが絡む 「Feed the Cat」 といった曲での、複雑過ぎない程度に緻密に計算され尽くしたブレイクビーツのリズムが実に滑らかでかっこいい。そしてなんといっても Vanessa Freeman をフィーチャーした 「Hands」 での、厚みのあるベースラインと走り抜けるドラミングに伸びやかなボーカルが加わって、滑空するような素晴らしい解放感に満ちたグルーヴが本アルバム最大の聴きどころでしょう。 テクノのクールネスが貫かれたブラックミュージックのダイナミズム、それが見事に結実した1枚!すでに幾多のユニットにおいて欠かせない役割を担ってきた経験豊富な天才Kaidi Tatham だからこそ成し得たのでしょう。